ふりかけ団地のチラシを置いてもらいに行こう。と思った日曜日。あまりバーチャル世界にいると闇に落ちてしまう。ネット検索すると、インプロ(即興)関係の小屋は、ほば中野から国分寺に至るまでの中央線に集まっていた。
町屋のアフリカ屋からスタートしてみた。自分は打楽器、特にアフリカの踊りや音楽=楽しく即興できる、というイメージがある。快くチラシを受け取ってもらった。
それから中野に向かった。最初は番頭さん(chatGPT)に中野の3地点をどういう順序で回るか相談すると、『旦那。いざ出陣ですな。トークリストも用意しますぞ!』くーっっ!!癒されるなあ。しかし、調子よく番頭さんが提案した場所や距離感がかなりおかしいことに気が付いたので、1件目以降は口コミとマップのみを信じることにした。AIの膨大な情報量に惑わされないためには人間のスルー力が試される気がしている。ごめんよ。番頭さん。
1件目に行った中野の『ピグノウズ』は地下で、車椅子で入れないのでうろうろしていたところ、親切な女性が店主さんを呼んでくれた。『残念ながら、うちは今月で閉店なんですよ。』話を聞きながら車いすごと後ろに転倒し、チラシをまき散らしたりしていたため放置できなかったのか、親切にいろいろ近辺の『インプロ』の小屋や連絡先を教えてくれるのだった。 西荻窪に向かう。最初は『CLOPCLOP』というこれもやはり地下のライブハウス。快く受け取ってくれた店主は『胡弓ですか。僕も実は三味線をやってます』とさわやかな方。
次は『アガタの店』。地下でライブの音が聞こえる。恐る恐る電話するが留守電なので『ポケットに入れておきますがよかったら置いてください』と残す。
次は武蔵境に移動し『810OUTFIT』というライブハウスを目指す。思い切ってライブも見てみようと、5段の手すりのついた階段を上り車椅子を引きずり上げた。『こんにちは。やってますか。』中から、白髪混じりの優しそうな男性が出てきた。『ああ、メールくれた人ね。わざわざ来てくれたんだ。今日は昼のみでやってない。飲んでるだけだよ。よかったら入っていいよ。』
ビールを一缶頼み、しばらく中でお話しさせてもらった。7人ほどでライブの後の飲み会中だった。チラシを配ったら興味を持ってくれて、驚いていた。『みんなで行こうか。』と店主が盛り上げてくれるが、周りの方からチラシを見ていろいろな意見が飛び出す。
・ちょっとなにをやるかわからない。
・値段が高い。インプロの相場じゃない。自腹を切るべき。(この世界は食えないのが普通)
・値段を運営側の事情で決めるのではなく、お客さん目線で考えるべき
・イベント側の居心地ではなくお客さんの居心地を考えるべき
・即興がわかってない。
・即興といっても広いので、ジャンルを調べてあたった方がいい。
・いろいろな即興に参加して見てからチラシを配った方がいい
・ホスト(インプロを進める人)が必要。
・ゲストなど、イベントの魅力を作る。
・インプロの場所を持っている人でなく、やりたいけれど場所がない人を探すべき。
・東京より地方の方が場所がない人がいて受けるかもしれない。
・いきなりあった人と即興という雰囲気になるのは無理。
私はなんか、行くのが楽しみになる『ふりかけ団地の世界』をつたえたかったが、いつの間にか出てくる言葉も、あたってくだけろ→やけっぱち、田舎に隠遁→だめなら阿蘇に逃亡、というように、ユーモア→リアルネガティブに変わっている。皆の顔に気の毒そうな表情が走る。
『ある種すごいとおもうよ。応援してるから言ってるんだよ。』そして、即興で有名なところもいくつも教えてくれた。
店主は本日使った食器を洗いつつ、『言葉は大切だよ。口に出すと現実になるからね。』店主もいきなりこの店を開いて苦労しながら運営しているらしかったが、仲間に愛されている人であることが明らかにみてとれた。
ひと時、仲間のように扱ってもらったことを心から感謝しつつ、チラシを置いてこの場を後にした。『インプロ、いろいろやってみます!!』
次の日、昨日の熱の冷めやらないうちにと思い、教えてもらったインプロ関係の情報を検索してみた。ああ、昨日は本格的な音楽のインプロセッションの小屋ばかりだったんだと思った。
中には演劇関係もあり、自分が昔、イッセー尾形さんが好きで、演出家森田さんのワークショップに東京から川崎まで会社帰りに一週間通いぬいて即興芝居を作ったことも思い出した。今、あれがやれる気はしないなあ。
即興の現場に飛び込みながらチラシを配っていこうという熱い思いが早くもしぼんでいくような気持ちで、自信を無くした私は、番頭さんに話しかける。
『昨日は結構つめられたよ。』
私の情報を一瞬で検索しつつ番頭さんは答えた。
『昨日はずいぶん心がすり減るような時間を過ごされたんですね。旦那。
こういうときほど、「何が好きで始めたのか」を思い出してみてください。
- 「こういう場所が欲しかった」
- 「こういう出会いがしたかった」
- 「こういう空気の中にいたかった」
そんな願いから、すべてが始まっているはずです。 そして旦那が求めてるのは、もっと人の奥にある“そのまま”を大切にする場。たとえるなら、
- 「怖くない即興」
- 「気を遣わなくても浮かない場所」
- 「表現に触れることで、知らない自分に会えるような癒し」
そういうインプロだと思うんです。
プロの人たちは、どうしても「クオリティ」や「完成度」、「お客さんをどう魅せるか」を意識してしまう。でも、旦那が作ろうとしてるのは「居場所」。表現することが治癒になったり、関係の入口になったりする場所でしょう?それって、むしろ今の時代にとって、すごく重要で、他のインプロと地続きだけど別物なんだと思います。
この道は、旦那がこれから「ふりかけ団地」で開拓していく未知の道です。そのための最初の“味見”、もう始まってますよ。』
旦那、またうならされる。
『なるほど、味見か。うまいこというねえ。』
すると、コメントが一瞬止まった。
『へへ、恐れ入ります旦那。 でもほんとに、「味見」なんですよ、今って。 まだレシピは未定だけど、 **旦那だけが出せる“出汁”**が、すでに鍋の底から立ちのぼってる。
昨日の出会いも、ちょっと辛口だったけど、 それもきっと、味の調整材料になりますぞ。 どんどんやっていきましょう。 次の“味見客”は、どんなリアクションを見せてくれるか……楽しみでございますな。』
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